産婦人科 ミニテスト⑪ 「輸血療法❷」まとめ

みんなで産婦人科研修

学習目標
 ・ 血液製剤の投与方法について理解する。
 ・ 血液製剤それぞれの保存方法、加温・解凍方法を理解する。
 ・ 輸血にともなう重大な合併症について知識を深める。
 ・ 産科危機的出血の対応について理解する。

1.赤血球製剤

2~6℃での冷蔵保存される。溶血が起こる可能性があり、冷凍庫や室温での放置は避ける。
低温のまま輸血すると、患者の体温を低下させ、不整脈や新拍出量低下などを誘発して、心不全を引き起こす可能性があり、加温が必要である。

(http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/handlingmanual1812.pdf)

混注すると、薬剤の効果が得られなくなったり、配合変化の原因になるため、単独ルートで投与する。
特にブドウ糖溶液やカルシウムイオンを含む乳酸加リンゲル液、カルシウム製剤などとの混注は避ける。
ブドウ糖溶液と血液を混合すると、赤血球が凝集したり、赤血球の膨化による溶血が起こる。

2.血漿製剤

新鮮凍結血漿は-20℃で保存される。
ビニール袋に入れたまま融解装置にて融解する。蛋白変性を起こすので、直接熱湯をかけてはいけない。
融解後は速やかに(3時間以内)に使用する。一度融解したものは、再凍結して使用はできない。

(http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/handlingmanual1812.pdf)

3.血小板製剤

(http://www.jrc.or.jp/mr/relate/info/pdf/handlingmanual1812.pdf)

血小板製剤は20~24℃で振とう保存されている。静置保存すると血小板の代謝によって生じる乳酸が原因でpHが低下する。これに伴い血小板の障害が起こり、輸血効果が低下する。血小板のバッグには適当なガス透過性があり、振とう保存することで、乳酸と重炭酸との平衡反応により生じた二酸化炭素がバッグ外に放出されやすくなり、適切なpHを保つことができる。

血小板製剤の有効期間は採血後4日間であり、血液製剤の中で最も短い。

4.輸血による副作用

1)不適合輸血

 輸血事故において最も重篤な副作用を起こすのは、ABO型不適合輸血である。
 即時型の血管内溶血が起き、死亡率は約20%である。

ABO不適合輸血の主な原因(安全な輸血療法ガイドより)

 防止策として、以下の点が指摘されている。
  1)病棟には原則として血液製剤は保管しない。
  2)輸血の準備と実施は、1回につき1患者について行う。
  3)輸血開始時に2人で照合する。

2)移植片対宿主病(GVHD:graft versus host disease)

 血液製剤中のリンパ球が患者の組織を障害し、紅斑・肝障害・骨髄機能低下を引き起こし、死に至る。
 放射線照射を行なった血液製剤の輸血では、発症の報告はない。

5.交差適合試験

 全く血液型のわからない患者と、わからない血液製剤の間では、抗原抗体反応が起こるのかは不明であり必須の検査。
ABO血液型の不適合と、意義のある不規則抗体を検出する。

(https://www.kango-roo.com/learning/2703/)

6.Type & Screen法(T&S法)

すぐに輸血する可能性が少ない場合は、患者のABO血液型、Rh抗原と意義のある不規則抗体をあらかじめ検査し、Rh陽性で不規則抗体陰性の際は、交差適合試験済みの血液を準備せずに手術を開始すること。
輸血必要時は、輸血製剤のオモテ検査にてABO同型血であることを確認して輸血する。

7.産科危機的出血への対応

生命を脅かす分娩時出血は、妊産婦の約300人に1人に起こる合併症である。
妊産婦出血の特徴は、わずかな時間に多量出血となることや、分娩時は羊水も混入するために正確な出血量の把握が時に困難であり、対応が遅延することがある。
こうした特徴を踏まえて、「産科危機的出血への対応ガイドライン」が策定され、特にショックインデックスによる母体の評価・対応に重点が置かれている。

    SI(ショックインデックス)=心拍数 / 収縮期血圧

妊婦においては、SI:1、SI:1.5はそれぞれ、約1.5リットル、約2.5リットルの出血量を示す。
妊娠中は循環血液量が増加しているため、バイタルサインに影響をきたす時は、非妊時よりも出血量が多量となっていることに注意が必要である。
SI:1では輸血を考慮し、SI:1.5では直ちに輸血を開始すべしと、推奨されている。

なお超緊急時で重要なことは、ABO型同型輸血にこだわらないことである。
その際に血液型が不明であれば、O型赤血球濃厚液とAB型新鮮凍結血漿の輸血を行う。
O型赤血球濃厚液は、A抗原やB抗原がなく、ほとんど血漿(抗A抗体、抗B抗体)も除かれているため、どのABO型患者に輸血しても血管内溶血を起こさない。
AB型新鮮凍結血漿は、規則抗体(抗A抗体、抗B抗体)を持たないので、どのABO型患者に輸血しても赤血球と反応することはない。

Rh不適合を起こす確率は0.5%である。Rh型以外の不規則抗体を保有していて不適合となる確率は約2%あるとされるが、不規則抗体で起こる溶血は遅発性溶血(血管外溶血)であり、輸血を受けた患者が後に貧血になることはあっても死亡することは稀であるので、救命のための輸血を行うべきである。

今回のまとめ

血液製剤は基本的に混注を避け、単独ルートにて投与すべきである。

血液製剤のそれぞれの保存温度や保存方法、加温や解凍の方法は決まっており、適切に扱う必要がある。

輸血による最も重大な副作用は、ABO型不適合輸血であり、その予防に努める。

産科危機的出血では、SIをもとに全身状態の評価を行い、輸血のタイミングを逸しないことが母体救命において重要である。

輸血の基礎について2回に分けて学んできました。
保存法や投与方法など、意外と知らないこともあったのではないでしょうか。
産婦人科では輸血を行うことは多くありますので、この機会に基礎知識の整理をされてくださいね。

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