産婦人科 ミニテスト⑩ 「輸血療法❶」まとめ

みんなで産婦人科研修

学習目標
 ・ 血液型の発見の歴史と、分類の方法について理解する。
 ・ それぞれの血液型の臨床における重要性を理解する。 
 ・ 輸血製剤のそれぞれの投与目的を理解し、適切に使用ができる。
 ・ 赤血球製剤の「Ir」「LR」について理解する。

1.ABO式血液型の発見

1900年にオーストリアのK.Landsteiner(カール・ラントシュタイナー)博士が、実験室のスタッフ22名の血清と赤血球の組み合わせから3種類の反応を見出し、A型、B型、C型と名付けた。
C型は血清に対する抗原がなく、「ゼロ」との意味から、後にO型と呼ばれるようになった。
なお実験室のスタッフには偶然、AB型がおらずに、この血液型は報告されなかった。AB型は他の研究者により、1901年に発見して報告された。
K.Landsteiner博士は1930年にノーベル生理学・医学賞を受賞し、オーストリアのユーロ導入前の1000シリング紙幣に博士の肖像画が使用されていた。

2.血液型

ABO式血液型の特徴は、血清中に自己の赤血球が保有しない抗原に対する抗体をもっていることである。
組み合わせからすれば、AB型がO型よりも多くなるはずだが、O遺伝子が多く、世界ではO型が一番多い。
国や地域により血液型の割合は異なり、フランス、ポルトガル、スペインはA型が多い。グァテマラでは95%がO型である。

(https://www.terumo.co.jp/challengers/challengers/10.html)

抗A抗体、抗B抗体を規則抗体と呼ぶ。それ以外は不規則抗体と呼び、輸血・妊娠・移植により産生される。主としてIgG抗体であり、妊娠中は胎盤を通過する。

Rh式血液型は、1940年にアカゲザル(Rhesus monkey)にヒトと共通した血液因子があることを発見されたことに由来する。よって、Rh陽性は「リーサス・ポジティブ」という。
Rh式血液型は40種類以上もの抗原から構成され、輸血に関連する重要な抗原は、C、c、D、d、E、eの6抗原である。
抗Dが免疫源として最も強く、臨床的に重要であるため、D抗原陽性者を一般にRh陽性という。

血液型は「赤血球膜抗原」の数だけあり、300種類ほどといわれる。
輸血において重要な抗原は、A、B、Diego、Duffy、Kidd、Kelle、Rh、S/sである。

(https://www.hanakonote.com/kango/crossmatchs.html)
(http://kompas.hosp.keio.ac.jp/sp/contents/000087.html)

オモテ試験とは、抗A・抗B抗血清を用いて血球の抗原型をみる試験である。
ウラ試験とは、血清中の抗A、抗B抗体の有無をみる試験である。

3.輸血の歴史

(Brundell J: The Lancet 12, 302, 13, 1829)

医学記録に残る初めてのヒトからヒトへの輸血医療は、イギリス・ロンドンの産婦人科医であったブランデルが、産後の弛緩出血で生命の危機にあった産婦への輸血であり、1818年に学会にて報告された。
当時、血液型は知られておらず、血液型を無視して輸血したため、成功例は半数であったといわれる。
当時の輸血は、助手の血管から輸血器具を介して直接輸血が行われ、救命されたとのことである。

4.輸血の目的

赤血球、血小板、凝固因子の成分の機能や量が低下した時に、補充する治療法である。

 赤血球製剤  ・・・ 組織・臓器への酸素供給
 血小板製剤  ・・・ 出血の阻止・防止
 新鮮血漿製剤 ・・・ 出血の阻止

5.輸血用血液製剤

1)赤血球製剤

(http://www.jrc.or.jp/mr/product/list/)

 Ir(Irradiated)
:移植片対宿主病の予防のために放射線が照射されている。
 LR(Leukocytes Reduced)
:保存に伴う凝集塊の発生や、発熱反応や同種免疫反応等の輸血関連副作用の予防や低減のため、保存前に白血球除去が実施されている。

静脈路の確保は、基本的には18G以上で行う。細すぎると抵抗により、血球に圧力がかかり溶血してしまう。成人であれば、22G以上の静脈針を使用すれば問題になることは少ない。

今回のまとめ

血液型は300種類ほどあると言われ、ABO型血液型ではオモテ試験・ウラ試験により、血液型の特定を行う。

Rh式血液型では、抗D抗原が臨床的に最も重要であり、一般的にRh陽性という。

血液製剤にはそれぞれの投与目的があり、適切に使用することが重要である。

赤血球製剤の「Ir」「LR」は、副作用対策が行われていることを示している。

産科は歴史的にも、輸血と深い関わりがあったことを学ばれたことと思います。
今の医療があるのも、先人のまさに命がけの挑戦のお陰であると、改めて感謝の思いがわいてきますね。

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