学習目標
・ 様々な避妊法を理解し、その利点と違いについて理解する
・ 避妊法の特徴を知り、適切に使い分けることができる。
・ OCの使用法、副効果、副作用を知る。
・ 緊急避妊について理解を深め、適切に使用できる。
1.我が国の出生数と人工妊娠中絶数の推移
我が国の出生数は、厚労省によると第一次ベビーブームにあたる1949年(昭和24年)の約270万人/年が最多であった。
1971年~74年の第二次ベビーブームがあるものの、緩やかに減少を続け、2016年には100万人/年を割り、2018年は92万人/年となっている。
一方、人工妊娠中絶は、1955年(昭和30年)の約117万件/年を最高に、徐々に減少を続け、昨今は約17万件/年となっている。
減少傾向ではあるものの、17万件/年の中絶せざるを得なかった妊娠が存在しており、適切な避妊法を理解し、勧めてくことが重要である。
2.避妊法
我が国において、最も選択されている避妊法は男性用コンドームである。男性用コンドームは性感染症の予防ができる利点もあるが、コンドームの破損などもあり、一般的な使用では1年間の妊娠する割合は14%である。
次に用いられている避妊法は排卵期を予測したリズム法であるが、一般的な使用での1年間の妊娠する割合は25%であり、確実な避妊法とは言えない。
低用量ピルは避妊の確実性が高く、適切に使用すれば、1年間に妊娠する割合は0.1%と低い。
3.Lactation Amenorrhea Method(LAM)
授乳中は赤ちゃんの吸啜により、GnRH、FSH、LHの分泌にも影響を与え、排卵や月経が抑制される。
授乳にともなう無排卵による避妊法を、Lactation Amenorrhea Method(LAM)という。
無計画な妊娠も防ぎ、無料の避妊法である。以下の3つの条件を満たす必要がある。
1)乳児の月齢が6ヶ月未満である
2)無月経である。
3)完全に母乳のみを与えている。
この3つの条件を満たす場合、98~100%の確率で避妊できる。
4.低用量ピル:oral contraception(OC)
OCはエストロゲンとプロゲスチンの合剤であり、排卵を抑制することで避妊効果がある。初経発来から閉経まで内服可能である。
女性の第二次性徴では、14歳頃に骨端線が閉鎖に近づき、15歳前後で身長が固まる。骨端線の閉鎖はエストロゲンの急速な分泌により惹起されるため、OCの服用開始は骨成長への影響も考慮して開始時期を検討する。
40歳以上の女性では、喫煙、高血圧、糖尿病など心血管リスクを検討し、これらがない場合に慎重に投与する。
5.OCの服用法
卵胞発育が進行してからOCを服用すると排卵を抑制できないため、初回のOCは月経5日目までに服用を開始する。月経5日目を過ぎてOCを開始した場合は、追加の避妊法を用いるか、7日間は性交渉を避けるべきである。
1錠の飲み忘れに気づいた場合は、飲み忘れた錠剤をなるべく早く服用し、残りの錠剤は予定通りに服用すれば避妊効果は保たれる。
6.OCの避妊以外の効果
過多月経、月経困難、月経前症候群、月経関連片頭痛、尋常性痤瘡(にきび)、多毛症が改善する。
子宮体がん、卵巣がん、大腸がんが減少する。
7.OCの副作用
静脈血栓塞栓症、乳房緊満感、嘔気、不正性器出血などが起こることがある。
静脈血栓塞栓症の発症頻度は3~9人/10,000婦人・年間であり、発症は服用開始後3ヶ月以内が最も多いが、その後は減少するものの、非服用者よりもリスクは高い。
ただし下表のとおり、交通事故や妊娠出産における死亡リスクに比べるとリスクは低く、基本的には安全に使用できうるものであり、適切に説明することが重要である。
手術による安静臥床や不動も加わることで静脈血栓塞栓症のリスクが増加するため、30分を超える手術や、術後に不動を伴う手術では、少なくとも手術の4週間前からOCの服用を中止する必要がある。
また子宮頸がんと乳がんの発症リスクを増加させる可能性が指摘されている。
8.緊急避妊
コンドームの破裂など避妊失敗の際には、72時間以内に緊急避妊用ピルを服用する方法がある。
①ノボノルゲストレル(ノルレボ®︎)錠1.5mg1回1錠あるいは0.75mg錠1回2錠を1回内服
②ノルゲストレル・エチニルエストラジオール(プラノバール®︎)配合錠1回2錠 12時間間隔で2回服用
という2つの方法がある。いずれも自費診療である。ノルレボ®︎錠のほうが避妊効果が高く、有害事象発現率も低い。
今回のまとめ
人工妊娠中絶数は減少が続いているが、いまだ17万件/年が行われており、適切な避妊法を勧めていくことが重要である。
それぞれの避妊法は利点、失敗率と異なっており、特徴を知っておくことが必要である。
中でも一般的なOCについて理解を深め、副効果や副作用を知り、服用についてアドバイスできることが重要である。
緊急避妊について理解を深め、必要な際にアドバイスできることは重要である。
避妊法を適切に用いることは、望まざる妊娠を防ぐことにつながるでしょう。
また持病がある方にとっては、持病が落ち着くまでは避妊法を用いて、リスクの高い状態での妊娠を避けることも大事ですね。
コメント