産婦人科ミニテスト③ 「妊婦の葉酸、喫煙、飲酒」まとめ

学習目標
　・妊娠を考えている女性に、葉酸の意義と服用法を説明できる。
　・妊娠前から葉酸の服用が強く勧められる疾患を知る。
　・喫煙の妊婦と胎児、出生児への影響を理解し、アドバイスができる。
　・飲酒の妊婦と胎児への影響を理解し、アドバイスができる。

妊娠と葉酸

神経管閉鎖障害（NTDs：Neural Tube Defects）は、先天性の脳や脊柱に発生する融合不全であり、無脳症、脳瘤、二分脊椎などが含まれる。発生率は1万分娩あたり5.2人である。
葉酸不足とNTDs発症リスクは関連があり、妊娠可能な女性への葉酸補充の啓発が必要である。
妊娠に気づき受診するタイミングは、一般的には妊娠5週から6週頃である。神経管の閉鎖は妊娠6週末で完成するため、妊娠に気づいてからの葉酸服用では遅すぎ、妊娠が成立する1ヶ月以上前からの服用が必要である。

米国疾病管理予防センター（CDC：Centers for Disease Control and Prevention）は、NTDs児出産のリスク低減のため、NTDs児出産既往女性は4mg/day、妊娠可能年齢の全女性は0.4mg/dayの葉酸摂取を勧告している。
0.4mgの葉酸を野菜で摂取しようとすると、1日に約350gの野菜を摂取する必要がある。両手1杯分の緑黄色野菜が100gであり、350gを毎日摂取することは難しい。
葉酸の補充期間は確かな目安はないが、妊娠3ヶ月まで服用することが望ましく、副作用はほとんどないため、そのまま服用を継続しても構わない。
なお葉酸4mgの摂取のためには、わが国では1錠5mgの葉酸錠（フォリアミン^®︎）がある。

カルバマゼピン（テグレトール^®︎）やバルプロ酸（デパケン^®︎）などの抗痙攣薬の多くは葉酸拮抗作用がある。潰瘍性大腸炎に対するサラゾスルファピリジン（サラゾピリン^®︎）にも抗葉酸活性がある。こうした薬を服用中は、NTDs発症リスクの低減のため、妊娠前から妊娠11週まで、4～5mg/dayの葉酸摂取が勧められる。

妊娠と喫煙

厚労省の調査では、妊婦の喫煙率は3.8％にのぼる。
喫煙は妊婦や胎児、出生児に様々な影響を及ぼす。
胎児の先天奇形を増加させ、口唇裂、口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損、腹壁破裂などがみられる。
喫煙本数により胎児の体重は抑制され、受動喫煙でも35～90g抑制される。
家族の喫煙においても、乳児突然死症候群（SIDS：Sudden Infant Death Syndrome）などの疾患が増加するため、配偶者を含めた家族にも禁煙あるいは分煙を勧める。

	疾患
母体への影響	不妊、異所性妊娠、自然流産、胎盤剥離、前期破水、早産
胎児への影響	死産、新生児仮死、低出生体重児、先天奇形
出生後児への影響	SIDS、気管支喘息、アトピー、低身長、幼少時肥満
妊婦の受動喫煙の影響	胎児死亡、先天奇形

（伊豆倉遥:葉酸,タバコ,アルコール,お母さんを守ろう,治療,南山堂,2018より引用改変）

妊娠と飲酒

厚労省の調査によると、妊娠中に飲酒した経験のある妊婦の割合は8.7％である。
妊娠中の飲酒による胎児への悪影響を胎児性アルコール・スペクトラム障害（FASD：Fetal Alcohol Spectrum Disorders）と総称し、先天異常（特異顔貌、多動や学習障害）と妊娠経過の異常（胎児発育不全）の双方が含まれる。
米国小児科学会は妊娠中の飲酒について警告を発出し、飲酒の量、妊娠のどの時期に飲酒したか、酒の種類、については用量の安全域や安全な時期というものは存在しないとしている。
過量飲酒（エタノール約60ml/day＝ビール350ml缶×4）はFASDのリスクを増すが、最小量でも発症のリスクがある。
胎児への影響以外にも、妊婦のうつ症状の悪化や、乳児への虐待の感情を持つ可能性が指摘されている。

今回のまとめ

葉酸は、NTDsリスクの低減に関わっているため、妊娠を考えている全ての女性に服用が勧められる。
妊娠前から0.4mg/dayの服用が必要であり、抗てんかん薬などを服用中の女性は4mg/day（フォリアミン5mg錠/day）の服用が勧められる。

妊婦の喫煙は、妊婦、胎児、出生児に影響がある。受動喫煙も影響があり、父親を含む家族にも禁煙が勧められる。

妊婦の飲酒は、少量でも妊婦や胎児へ影響する可能性があり、注意を促す。